尾瀬をレポートする 第1回 「2020年度の入山者数について!」
2月18日、環境省・関東地方環境事務所は、2020年度の尾瀬入山者数を発表しました。
厳しい新型新型コロナ感染防止策が要求された2020年の尾瀬!
入山者はなんと106,922人(旧尾瀬地域は96,975人)でした!!
心底 尾瀬が好きな人たちがこんなにたくさんいたとは!! うれしい限りです!
下の写真は2019年と2020年の同じ10月3日午後2時頃の福島県側の入山基地である桧枝岐村・御池の駐車場です!平日と土曜日の違いがありますが、尾瀬ヶ原から三条の滝を経由して燧裏林道を歩いて御池駐車場に到着、西側にある登山口前から撮りました。燧裏林道の周辺の紅葉は両年ともに見頃でした。2020年、車の多さにびっくりしたものです!
2019年10月3日(木)午後2時頃の御池駐車場 平日の為か、閑散としています!
2020年10月3日(土)午後2時頃の御池駐車場 たくさんの車です!
10月初旬の尾瀬ヶ原・見晴!6軒のうち、3軒(左の原の小屋、右の第二長蔵小屋その奥の尾瀬小屋)が休業 すさまじい姿でした
2020年、尾瀬地域の山小屋は例年5月半ばに営業開始するところを、「緊急事態宣言」の発令を受けて 約1か月半遅れて 7月1日から営業開始しました。同地域の山小屋は17軒、うち6軒が休業しました。特に尾瀬銀座と称される尾瀬ヶ原東端の見晴地区では、6軒のうち半数の3軒が休業するという厳しい状況の中で、「一体どれほどの人が入山するのか?」と関係者の誰もが不安視していました? おまけに7月22日にスタートした「GoToトラベル支援事業」も東京発着が始まったのは10月1日からで、「10月末には営業を終える尾瀬地域」にとっては大きな援護射撃にはならなかったと思われました。しかし!
こんな厳しい状況の中で、実質3カ月半(例年10月は、15日を過ぎると訪れる人は極端に減少します)の間に、約10万にも人々が尾瀬を訪れたのです!
環境省が発表してきた尾瀬の入山者数を表にしました!
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環境省が1989年(平成2年)から入山者数の集計を始めて以降、最大の入山者数(ピーク数)は1996年(平成8年)の64万人強です。その後は年々減少し続け、一昨年(2019年)は、ピーク数の4割にも満たない24万人弱(尾瀬地域)でした。それが、新型コロナ感染防止策による様々な制限のある中で、しかも7月から10月までの実質3カ月半の期間(例年10月は、15日を過ぎると訪れる人は極端に減少します)で凡そ10万人もの人々が尾瀬地域訪れたのです! 二度と「寝返りもうてないほどの大雑魚寝時代」に戻りたいとは思いませんが、あまりに人気のない尾瀬もさみしいものです。近年の25~30万人前後の入山者数は、「適切な人数」であると思われます。そして昨年の約10万人という数字は、コアな尾瀬愛好者が全国に限りなく存在していることを示しています!
しかし?入山者数の発表文を見て腑に落ちないことがあるのです?
2020年度の「尾瀬入山者数の発表」について、昨年までの発表時に感じた「熱意さ」が伝わってこないのです! よく言えば「冷静さ」ですが、悪く言えば「無責任さ」といえるように感じました?
そこで、環境省・関東地方環境事務所が2月、3月に発表した2か所の「入山者数について」を見比べてみました?
- 2月18日に発表した「令和2年度 尾瀬国立公園の入山者数」では、2019年度までのスタイルであった、総入山者数などについての概略、そしてその要因、「入山者総数、入山口別、月別、曜日別の入山者数に加え、各項目ごとの推移表」を載せた入山者数「表とグラフ」を資料として添付するスタイルを捨てて、「A4用紙2枚」に入山者数調査の「目的」及び「方法」を説明、「結果」として2020年単年度の入山口毎の入山者数の「表」と、総入山者数の推移(2007年以降の総入山者数)を載せています。しかし、入山者数についての論評がない上に、自らが発した「新型コロナ感染症対策としての入山自粛要請」に全く触れていないというお粗末な発表でした? これまでに比べ、入山者の扱いが「とても軽い、おざなりな扱い」の発表と感じました?
- 3月17日に発表した「令和2年度 日光国立公園戦場ヶ原周回線利用者数について」では、発表形式は同じながら、新型コロナ感染問題について記述しているのは当然のこと、資料についても「年度別利用者数、月別・場所別利用者数そして時間別・場所別利用者数」まで細かく記載してあります。
見比べた結果、同じスタイルで入山者数(利用者数)を発表していますが、「尾瀬」の発表文には「とても軽い、おざなりな扱いの発表」で無責任的な発表と感じました?
なぜなのかと以前の発表を調べると? 2019年度分までの発表スタイルは2005年度分発表時のスタイルを踏襲していました!
ホームページで尾瀬の入山者について調べると2005年まで遡ることができました(2007年度分は記録だけでした)! この間の文書を見てみると、
- 2008年度分の発表時に一部修正していますが、2005年度分発表時の文書(左側)のスタイルを2019年度分発表時の文書(右側)まで踏襲しており、15年間殆ど変わっていません!
- 内容は、2005年度分では全体の入山者数など5項目でした。
- 2008年度に6項目となりましたが、 ⑥の「総括」は2009年度分から、⑤の「1日当たりの入山者の多かった日と入山者数」は2012年度分からが削除され、以後は4項目となっています!
- 各年度とも、入山者数の増減等について、内容はともかく必ず触れています!
2005年度分及び2019年度分、そして2020年度分の「尾瀬」及び「日光・戦場が原」の4つの文書を比較すると、2020年度の「尾瀬」だけが相違して簡略化されています!
環境省・関東地方環境事務所が、尾瀬同様「入山自粛要請」を出している「日光・戦場が原」の利用者数の発表では、「・・・新型コロナ感染防止のため、外出自粛の要請がされたこと・・・」と記述しているにも拘らず、同じように「入山自粛」を求めた「尾瀬地域」において記述しないの「無責任すぎる」と思われます!
なぜなのか、何か意図があるのでしょうが、発表文からは読み取れません?
「入山者数の発表」の目的を変更しているのではないか?」と思われます。それは、新型コロナ感染問題が起こる以前から感じていたことです! というのは、数年前から尾瀬沼東岸で「尾瀬沼ビジターセンター新築工事」が、「こそこそ」と、しかし「大っぴら」に進められてきたからです。残念なことに新聞等が取り上げてはいませんでした。いろいろと憶測されてはいましたが? ところが、今回「なるほど」という結論が得られたのです!この件は、改めて記述します!
新聞報道に探していた回答がありました!
「尾瀬の入山者数」について、全国紙3紙の全国版紙面には掲載がありません?
- 環境省・関東地方環境事務所の発表について報道各社はどのように報じているのでしょうか。残念なことに全国紙3紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の各紙)の全国版に掲載はありませんが、地域版で確認されています! また、朝日新聞では、入山者数についての掲載は少なくとも2013年以降はありません。なお、2019年の入山者数については日本経済経新聞が掲載していました。注 毎日新聞及び読売新聞は2019年度以前の掲載の有無について調査しておりません
地方紙3紙及び全国紙3紙の地方版に掲載されています!
- 地方紙では、群馬県の上毛新聞、福島県の福島民報そして福島民友新聞で2月19日付でに掲載されています!
- 全国紙3紙では、少し遅れて2月23日に毎日新聞群馬版及び読売新聞群馬版に、さらに遅れて3月16日に朝日新聞群馬版に掲載されています。
この中で3紙が、環境省・関東地方環境事務所が、隠していたと思われる意図をほぼ同じ内容で記述していました!
上毛新聞、福島民報そして朝日新聞は、環境省・関東地方環境事務所の担当者の発言として次のように報じています!
- 福島民報は、「担当者は『・・・数だけでなく、尾瀬の満足度を高め、リピーターを増やしたい・・・』」
- 上毛新聞は、「同省関東地方環境事務所は、『・・・訪れた人の満足度をいかに高めるか』と指摘『・・・リピーターを増やしたい・・・』」
- 朝日新聞は、「環境省の担当者は『・・・満足度の高さを目指してリピーターを増やす・・・』と話した」
さらに、福島民報は、
「・・・環境省は尾瀬沼ビジターセンターの新築工事など施設の充実化に・・・」と報じています!
環境省・関東地方環境事務所が、入山者の量的拡大策から方向転換して今後進めるであろう方向性まで記述しています?
尾瀬の入山者が減少を続けてきたのは、現実です!
「なぜ、尾瀬の入山者が減少し続けてきたのか」は簡単には解けない問題でしょう。 しかし、この「入山者が減少し続けた現実を」避けて「入山者の満足度」を高めることができるのでしょうか? 単に論点をすり替えて、現実の問題から逃げているだけのことでしょう?
「尾瀬に満足出来なかった」から「入山者が減少し続けた」のです!
「2000m級の山々に囲まれた、本州最大級の広い湿原の木道を歩き、水芭蕉や日光黄菅に代表される花々に見とれ、草紅葉や紅葉に駆け足で過ぎ去る秋を感じる・・・・」これが「尾瀬の第一の魅力」でしょう!そして この「尾瀬の魅力」が「色褪せてきた」からこそ「入山者が減少し続けて」来たのです! さらに、
福島県側の御池と尾瀬ヶ原や三条の滝を結ぶ「燧裏林道」や「三条の滝道」、かつての大動脈である「尾瀬ヶ原林道」の劣化はどんどん進行しています!
燧裏林道・姫田代⇔御池田代間の劣化・腐食が進んだ階段木道? 10年前には感激したのですが今は?
尾瀬地域の中心は、尾瀬ヶ原です! 尾瀬沼周辺や三条の滝そして燧裏林道沿いの湿原などは、尾瀬地域を構成する重要な要素の一つ一つですが、尾瀬沼や三条の滝だけで尾瀬地域を代表することはできません! それは、武田久吉氏以来の変わらぬ姿です!それにも増して、「道の劣悪さ」は喫緊の課題です! 福島県側の御池から尾瀬ヶ原や三条の滝を結ぶ、「燧裏林道」や「三条の滝道」は劣化・腐食が進み歩きづらい道となっています!尾瀬沼地区と尾瀬ヶ原を結ぶかつての大動脈「尾瀬ヶ原林道」も半分近くは岩・石が露出した非木道区間で歩きづらいままです! こうした「道」の劣化・腐食も「入山者が減少した」要素の一つといえるでしょう!
しかも、環境省・関東地方環境事務所は、「もう尾瀬においては、入山者数は追いかけない!」という決意をしていながら、そのことを公けにせずにいます!
この方向転換が時代に合っているのか時代遅れなのか? 少なくとも現在まで尾瀬に足を運んだ尾瀬愛好者たちの半数以上は、中高年齢者であるという現実を無視して論議を進めているように感じます。
環境省・関東地方環境事務所は、尾瀬のコアな入山者が高齢者を主とした中高年齢者であるという現実を認めないで「若い人を尾瀬に」と夢想しているように見受けられますが、如何でしょうか?
今後も「尾瀬問題」を掘り続けてゆきます!
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